膝痛
子供から若い年代では靭帯や半月板などのケガ・損傷が多くまた成長時期特有の障害・痛みがよく見られます。
中高年の方では何と言っても変形性膝関節症を基礎疾患とした痛みや機能障害が問題になっています。
成長期(多運動期)の膝の痛み
先にご紹介しましたケガや使いすぎによる筋肉や腱、靭帯、半月板、関節を周りから構成・保護する関節包の障害をはじめ、
お皿(膝蓋骨)の周縁(とくに下縁)に発生する骨・軟骨障害による痛み。
お皿とスネの骨の上部との間に発生する靭帯炎や脂肪体の問題による痛み。
スネの上部の骨が出っ張った部分が痛くなる(オスグット病)が主なものです。
変形性膝関節症
関節軟骨が擦り減り、膝の曲げ伸ばしや歩行時に痛みを生じ、膝関節のなかに水が溜まったりする病気です。膝の内側の軟骨が擦り減ることが多く、膝の内側に痛みが出ます。病状が進むと、O脚変形が強くなり、正座や膝をまっすぐ伸ばすことができなくなります。
原因は?
O脚がもともとある人は要注意です。重労働、肥満も原因になります。また膝の病気や化膿やけがが原因となることもあります。
治療法は?
1.超音波、高圧電流治療器や干渉波(電気刺激)、膝の周りの筋肉を鍛える体操などの理学療法、マッサージ、消炎鎮痛剤(痛み止め)、パップ剤(湿布)、塗り薬、があります。
2.膝関節を安定させるサポーターや、O脚の影響を少なくする目的で足底板などの装具療法があります。
3.その他病院などでは・・・
- 1)関節内の変性した軟骨や半月板を取り除く方法
- 2)すねの骨を切ってO脚を矯正する方法(骨切り術)
- 3)関節を人工関節に置き換える方法(人工関節置換術)
日常生活での注意
1.肥満は膝の症状を悪化させます。減量しましょう。
- 食事のコントロールはもちろんですが、運動も必要です。ところが歩いたり走ったりは膝をさらに傷める可能性があります。
- 下に書いてある、体操や膝の筋力訓練を参考にしてください。
2.動き始めに痛みを感じることが多いので、膝を数回曲げ伸ばししてから歩き始めると痛みが和らぎます。
体操や膝の筋力訓練
膝の周りの筋肉を鍛えることにより、関節への負担が少なくなり痛みを軽減する効果があります。
1.プールの中での歩行
- プールの中での歩行は、水圧によるマッサージ効果があり浮力により膝にかかる負担が少なくな ります。注意することは方向を変えるときに膝を捻らないことです。プールの中は水流があります。特にコースの壁の近くは気をつける必要があります。
2.エアロバイク(固定式自転車)
- 最高脈拍数を決めて、20~30分間こいで下さい。
- 最高脈拍数は、180-年齢 (例えば50歳の人なら、180-50=130)以下に設定します。
3.膝関節周囲の筋力訓練
- 1)床に膝を伸ばした状態ですわり、さらに膝を伸ばすように太ももの筋肉に力を入れます。そのまま5秒間力を入れ続けます。
- 2)椅子に座って、片方ずつ伸ばし5秒間伸ばした状態を保ちます。
- 3)床に座った姿勢で、膝の間にボールやまるめたタオルを入れ、これを押しつぶすように力を5秒間入れます。
これらの運動はそれぞれ10~20回ずつ、1日2~3回行うようにします。
よく尋ねられる質問
1.水はなぜ溜まるのか?
膝関節のなかにはもともと、数ccの関節液があります。水は変形性関節症により関節のなかに炎症が起こり、その結果関節の袋の表面にある滑膜が反応して、水が作られます。
2.水を抜くと癖になるか?
水を抜いてもすぐに溜まることがあります。これは膝の中で炎症が起こっているためで、この炎症が治まれば水は溜まらなくなります。水を抜いたことで溜まるわけではありません。 治療で溜まらなくなるようにするのが目的です。
3.水は抜かないといけないのか?
必ずしも抜く必要はありません。ただし、溜まった水の量が極めて多い場合は、水による関節への悪影響があるため抜く必要があります。
4.歩いたほうが良いか?
痛みが出ない程度なら歩くのはかまいません。しかし痛みを我慢して歩いても、膝に必要以上の負担がかかるだけで、膝に対して良いことは何もありません。
5.医師が行う膝の注射はどのようなものがあるか?
膝関節の注射は、ヒアルロン酸と呼ばれる軟骨保護剤と炎症を抑えるステロイド剤があります。ただ漫然と何回も打つのは勧められません。
6.薬や注射で軟骨が再生するか?
現在のところ軟骨が再生する薬や注射はありません。
7.健康食品で軟骨が再生するか?
一部の健康食品には軟骨が再生されるようなことがうたわれています。最近ではそのような研究結果も報告され始めています。実際、当院の患者様のなかには、飲んだら調子がいいとおっしゃる方が結構います。
8.膝は温めたほうが良いのか?
変形性膝関節症は慢性疾患なので、基本的には温めたほうが良いのですが、急性期で熱感が強い場合は冷やしたほうが良いでしょう。湿布は皮膚から消炎鎮痛剤を吸収させて、炎症を抑える目的で使われます。